科学・技術・工学
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現代日本において、科学技術の恩恵に浴さずに
生活をすることはもはや不可能に近いと言ってよいほど、
科学技術の成果は日常の至る所に刻まれている。
科学とは、つまるところ、経験という唯一神をむかえ、
客観性を第一の宗旨とした、果てしない帰納の宗教である。
技術とは、言うなれば、演繹のスパイラルという、
一種の修行である。
科学は、経験を帰納的に展開するという論理構造ゆえに、
常に誤差をはらむ可能性とともにある。
技術は、科学を前提として演繹を始めた途端、
その愛すべき誤差も背負う運命にある。
そういったエラーを認識した上で、日常生活に技術を落とし込む
ことこそ、工学と呼ばれる学問のなすところである。
この事実を見過ごしたまま、技術不足により発生した事故を
批判することはたやすい。
そもそも不確定要素の多いこの世界にあって、
今送ることができている生活の基礎に、一体どれだけの工学的知見・工学的判断が
積み重ねられているだろうか。
その一つ一つを意識すべきとは言わないが、
せめてその考え方に耳を傾けた上で批判してはくれまいか。
神道を信仰してはいないけれども、年始には初詣に参り、
境内では帽子をとり、賽銭とともに二礼二拍手一礼をするような心持ちで。