UP8月号
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書籍部では、毎月中旬を過ぎるとUPがレジの向こう側に並ぶ。
タダでもらえるのだが、UPの購読料代わりとして、
もらうときは何か一冊本を買うようにしている。
UPで読んだ記事が面白くて本を買うことも多い。
「有限性の後で」「社会心理学講義」
「情念・感情・顔」あたりなんかがそうだ。
今月は春日直樹「アナロジーの非対称性から考える意図とパターン」
という記事が面白かった。
ここで言われている非対称性とは、既知の領域(=ベース・アナログ)
から未知の領域(=ターゲット・アナログ)へのアナロジーと、
その逆方向へのアナロジーの非対称性を指したものだ。
これは対称性バイアスによる錯覚であり、その錯覚を錯覚でなくなる
までに突き詰めると科学になるが、そうでなくてもアナロジーを
非対称性なままに活用する術を人類が身につけてきたのではないかと
筆者は指摘している。
その上で、
人類には動く事象の背後に何らかの意志を読みとる性向とともに、 その事象をパターン化する能力がそなわっている。
春日直樹「アナロジーの非対称性から考える意図とパターン」 UP8月号p.15
という指摘における「意志の察知」と「パターンの認知」の両者が、
お互いにベース・アナログとなってアナロジーを形成するところに
人類の生活が成り立つのではないかと提案する。
前者は心理的本質主義と言われるものだが、人間は無意味に耐えられない
ということにも通じ、理由律への希求だと捉えられる。
後者は意味付けや理由付けにおける抽象過程そのものだ。
両者は果たして切り分け可能なのだろうか。
抽象過程は圧縮過程であるから、必ず何らかの同一性の想定が含まれる。
パターン化と同一視はどちらが先に起こるのかを決められず、
一つの過程の両面なのではないかと思う。
あるいは、ウロボロスのように自分自身を参照しているような
ものではないかと思う。
だからこそ、「ロゴス=神」と言われるのではないだろうか。
ということで、春日直樹「科学と文化をつなぐ」を買った。