フェティシズム
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抽象した構造それ自体への愛からフェティシズムが生まれる。
対象は髪、脚といった特定の部分であることもあるし、声や匂いと
いった特定の知覚であることもあるし、三次元に対する二次元と
いった別の空間への写像であることもあるが、いずれにも共通
しているのは、特定の具象ではなく、具象群に見出される共通部分を
愛でるということである。
その共通部分がつまり、抽象した構造である。
実際に愛される個々の対象は具象なのだが、それは目的の構造を
有していれば何でもよいということになる。
ある一個の具象たることを自認する人間は、己を己のまま愛して
くれないことに抵抗を覚え、行き過ぎたフェティシズムを病的な
ものとして捉えるのだろう。
人間が自らの複製として人工知能やロボットを作る行為は、
人間のあらゆる部分を抽象しようとするという点において、
究極のフェティシズムをなしている。
それを突き詰めた先に、抽象した構造の集合としての具象が
あるのであれば、それはもはやフェティシズムではなくなり、
人工知能やロボットは人間と同一視されることになる。
そのためには、人間自身が抽象したことを忘れる必要があるだろう。
ディープラーニングのような理由付けを伴わない抽象には、
その可能性が秘められているように思われる。