サピエンス全史
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ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」を読んだ。
内容として特に真新しいことはなく、長い歴史を
コンパクトにまとめているので論述もあっさりで、
述べている内容に対して典拠の数が非常に少ない、
というのが率直な感想だ。
これだけの内容をまとめきったのはすごいと思うし、
読み物としては面白いのかもしれないが、個人的には
興味がそそられるものではなかった。
原題「Sapiens A Brief History of Humankind」に
対する、「サピエンス全史」という邦題や、「文明の
構造と人類の幸福」という副題も腑に落ちない。
想像上の秩序を維持するには、情報を抽象し続ける
必要がある。
サピエンスは、圧倒的に無知であると思い込むことで、
抽象の対象となる未分化な情報が大量にあるという
想定を生み出し、近代以降の劇的な成長を達成した。
図37のサルヴィアーティの世界地図が印象的だ。
その成長は、空間的にも時間的にも微に入り細を穿って
進行してきたが、いつまで空白を埋め続けることが
できるのだろうか。
抽象するべき空白を失わないための過程としての
「忘却」の機構はあるのだろうか。
生命にとって致命的な問題は、エネルギーではなく
エントロピーである。
想像上の秩序が維持される仕組みについて、ハラリは
どのように考えているのだろうか。
その理由自体が、また新しい想像上の秩序を生み出すはずだ。