赤目姫の潮解


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森博嗣「赤目姫の潮解」を読んだ。

これは抽象についての話だ。
抽象的な話ではなく、
抽象についての話。
「認識」も「理解」も、
ある基準に沿った抽象であり、
その基準はいつも変化している。
今のままでよいというこだわりと、
今のままではだめだという憧れ
のなす固定化と発散の間で、
判断基準を変えながら
抽象し続けるのが、
更新される秩序
=生命である。
判断基準は、
慣習や常識、
宗教や科学など、
様々なものに縛られ、
判断基準の変化しづらさが
粘性を生み出すことによって、
個の集合はより大きな個となる。
その粘性に固執してしまうのが
凡才の凡才たる所以であり、
天才の天才たる所以は、
データを無にして、
いつでも胎児に
戻れるという
判断基準の
柔軟さ、
つまりは
無邪気さにある。
壊死と瓦解の間で、
除数を変えつつ
割り直せる。
そういう
存在に
わたしは
なりたい。
わたし
とは