情報共有


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特定の情報は特定の人間だけが取り扱い、 その情報を基に下した判断のみを、それ 以外の人間と共有する。
コミュニケーションの範囲が特定の人間に 限られることで、特有の言語や常識の形成を 通して、判断基準についてのコンセンサスを 迅速に成立させることが可能になる。
この抽象的な情報共有の仕組みによって、 判断という抽象過程を効率的に洗練する ことができる。

近代は、この仕組みを専門分化と名付け、 大いに利用してきた。
近代的な一真教の教徒にとって、効率や 洗練といった言葉が示す方向は一意的に 決まるため、抽象的な情報共有は近代と とても相性がよい。

最近では特定の言語や常識をもつことが 必ずしもよしとされず、情報公開が進め られているが、情報公開というのは、 情報共有の抽象度を下げることである。
これまで具体的な情報を取り扱ってきた 人間以外の人間とは、言語や常識を共有 していないため、その情報をどのように 抽象するかについてコンセンサスを取る ためにはコストがかかり、それは効率の 低下とみなされる。

コミュニケーションのコストが変わらないと すれば、判断基準のコンセンサスに関する 効率の高さとは、つまりコミュニケーション 主体の多様性の低さであり、具体的な情報に アクセスする主体の多様性を取るか、効率を 取るかというのは、どちらがよいかという 問題ではなく、どちらをよしとするかの 問題であると思う。

巨人の肩の上に全員は立つことができない 状況で全員がかなたの景色を見渡すには、 どんな方法があるだろうか。
あるいは、より上に、よりかなたに、という 方向が一意的に決まるはずだという発想が、 そもそも近代的なのかもしれない。