ドローンの哲学
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グレゴワール・シャマユー「ドローンの哲学」
を読んだ。
物質的な遠近感に応じて把握される物理空間の中に、
観念的な遠近感に応じて把握される別の空間を
オーバーレイすることは「情報化」と呼べるが、
ドローンがもたらす距離空間の変化もまた、
一種の情報化であると言える。
ドローンの生み出す「距離」が新しいからこそ、
それによって可能になった現象を、戦闘や道徳、
法、権力といった既存の「距離」で表現すること
への違和感が生まれ、一方的に別の距離空間を
採用することへの非難がなされる。
どのようなかたちであれ、その違和感を解消する
には慣れるための時間が必要になる。
会話、教育、受精、介護、戦闘、…。
あらゆるかたちのコミュニケーションにおいて、
距離空間の変化は、当初は脱-人化unmanned、
無人化として受け取られる。
根底には、人間は人間に何かをしてほしいという
願望があり、この「人間に」という感覚を決める
のが「距離」の近さなのだろう。
その「距離」感は、当然「人間は」の部分にも
跳ね返ってくる。
それがつまり「私は何者になろうとしているのか」
という行く末の問題であり、ドローンだけでなく、
あらゆる「情報化」において現れる問題なのだ。