長崎旅行2014②


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2014/2/14〜2014/2/16 長崎

【2/15(土)】 ソチ五輪フィギュア男子フリーを寝ぶっちした翌朝、 目覚めると7時半過ぎ。
意外と早く起きられたと思いながらシャワーを浴びて 朝食バイキングへ行くと、思いの外混んでいて 少しロビーで待たされることに。

ちょうどロビーには今日行く予定にしていた 出津教会などを含む長崎県の教会の写真集が 置いてあったので手にとってみる。
昨日の夜にランタンに溢れる街を散策しながら 入った書店でも長崎の教会をまとめた本を 見てみたが、出津のあたりには他にも大野教会堂と 黒崎教会がありそうだ。

朝食を食べ終え、9時6分長崎駅前発のバスで一路外海へ。
(後でわかったが、ホテルの目の前のバス停からも 同じバスに乗れたっぽい。) 天気は上々、バスの乗客は少ない。

●大野 バスに揺られること小一時間、大野のバス停に到着。
朝食後、歯を磨きながら読んでいたウェブサイトを信用して ロクに場所を調べずに来てしまったが、 取り敢えず看板の指す方に歩き出す。
ここで今回の長崎旅行で唯一の雨に降られる。

5分くらいで大野教会堂に到着。当然観光客など一人もいない。
ド・ロ様壁で建てられた小さな住宅のようだ。

ここで写真を撮りながら思ったが、撮りたいと思う絵に 幾つか傾向がある。

角から回折した光が漏れている様子、太陽の半逆光による照り、 逆光で黒く潰れた被写体、、、 今回の旅行は偉大な背中を撮ろうと決めた。

大野教会堂の近くには案内板が出ているのでなるほど道には迷わないが、 大平作業所跡まで1km半、バスチャン屋敷跡まで3km弱。
歩くしかない。

雨で濡れたアスファルトが朝の半逆光に照らされる道をひた歩く。
土曜の朝だからか人も車も全く通らない。
遠くでとんびがピーヒョロロと啼く以外に生きていることを感じさせる ものは一切存在しない。
いつの間にか伊藤計劃のハーモニーに出てきたスイッチが押されたのかもな と思えるような、のどかさとも孤独感ともつかない感じにつつまれる。

大平作業所跡は予想通りの廃墟感を帯びていた。
ここに至る小道に唐突に現れたみかんの木が良い雰囲気をつくるのに 一役買っていると思う。
既に屋根は崩れ落ちているため、壁の上が歩ける。
壁の上に立ち、ここから落ちて打ちどころが悪くて死んだら誰にも 気づかれないだろうなという想像が頭をよぎり、大人しく下りることにした。
夕陽の時間帯に来たいなと思える場所だった。

そこからさらに1km半歩く。さっきよりもさらに田舎感が増してきて、 大野のバス停まで戻るのが面倒なのでこのまま出津まで歩きたくなってきた頃。

バスチャン屋敷跡は10m2にも満たないくらいの小屋だった。
旅行前に読んだ遠藤周作の沈黙でロドリゴたちが潜んだ小屋を想起させる。
小屋の中は本当に真っ暗で、入り口の扉を開けていないと空恐ろしさを覚えるくらいだ。
せっかくなのでオラショを覚えてる限り独唱してみた。
――パライゾの寺にぞ参ろやな モキチが十字架の上で叫んだ節を歌うと涙が出る。

屋敷跡に続く道を戻り、舗装路に出たときに目にした明るい景色。
それすらも望めず、鬱蒼としげる木々の間にひっそりと沈んでいた キリシタンを思うと、この暖かい土曜の昼の日差しが何とも言えず 贅沢なもののように感じられた。

案内板によると出津まで3.5kmくらいだったので、大野に戻る必要もなく、 そのまま出津まで歩く。
途中、牧野公民館のあたりでおばあさんたちに声を掛けてもらった。
ゲートボールに誘われたが丁重にお断りして、出津はこっちであってますかと 確認したり、埼玉から来ましたと言ったり。
こういう地元の人との何でもない話ができると、この旅をして本当に良かったなと思える。
おまけに最後には甘古呂餅まで頂いてしまった。
この後結局15時頃まで何も食べずに歩き続けることになったので本当に助かりました。
とってもおいしい甘古呂餅でした。

●出津 しばらく道なりに行くとド・ロ神父のお墓が見えてくる。
偉大な背中その2を写真に納める。
そこから割とすぐに出津教会に到着。
大野教会堂でも思ったが、入り口前の白い壁で囲まれた空間への 光の差し込み方がすごく好きだ。

ド・ロ神父記念館と出津救助院が近場にあり、当時の資料の展示などが されている。記念館で一番目を引いたのはなぜかタップだった。

救助院ではスタッフのおじさんにひとしきり案内をして頂いた。
鉄骨の耐震補強がされていたが、補強前の納まりが恐ろしく簡素で、 地震国でよくこんな納まりにしたなという感じだった。

救助院を出たところで観光客の一団とすれ違う。
そういえばガイドブックに土曜日はツアーがあるようなことが 書かれていた気がした。

歴史民俗資料館には寄らず、近くにある沈黙の碑に立ち寄る。
碑に刻まれた言葉には、ぞっとする迫力を感じる。
どうやったらこんな言葉が紡げるのだろう。
「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです」

●黒崎 記念館でもらった地図を見ると、道の駅を経由して黒崎教会まで歩けそうだったので 引き続き歩く。
途中遠藤周作文学館に立ち寄り、展示を観賞。
併設されたカフェで遅い昼食にド・ロ様パスタを食す。
道の駅は素通りし、黒崎教会まで突き進む。
途中に伊藤一長元長崎市長の墓があったのでお参りした。

黒崎教会は今日訪れた教会の中では一番教会然としていた。
ステンドグラスも嵌められていて、夕陽の間接光がステンドグラスを 通して入ってくる様子が何とも神聖な雰囲気をつくりだしていた。

道の駅まで戻って夕陽が沈むのを眺める。
このとき17時を回ったところなので、1時間くらい眺めていたことになる。

生憎西の空は快晴ではなかったが、雲間から漏れる、いわゆる エンジェルラダーという現象に立ち会えた。
今日一日歩きまわったキリスト教世界を思うと、かえって快晴であるよりも 合っていたかもしれない。
18時6分日没。

18時32分のバスまで少し時間があったので休憩所に立ち寄る。
天井が高く、意外と響きが良かったのでまたオラショを歌う。
相変わらず人はいない。

●稲佐山 夕陽をとっている最中にカメラの電池がなくなってきており、 昨晩充電しなかったことを激しく後悔する。
このまま夜景を見に行こうか一旦充電しに戻ろうか悩んだ挙句、 直接見に行くことにした。
宝町でバスを降り、淵神社まで10分ほど歩いてからロープウェイで山頂へ。

ちょうど満月の夜で、夜20時前の東の空に昇り始めている。
新世界三大夜景の一翼を担う街と同じ方角なのでフレームへの納まりが良い。

●晩御飯 トルコライスを食べたいと思ってホテル裏の洋食屋に行ってみたが やっていない。ウェブサイトだと23時までやってるはずなのに。

仕方なく浜町の方まで足をのばすと、アーケードでは昨日まで飾られていた ランタンを撤収している。
トルコライスを探して浜町を2周したが見つからない。
結局福山雅治氏行きつけの思案橋ラーメンでバクダンチャンポンを頂いて 満腹になってホテルへ帰る。

明日は市内をひたすら歩く予定なので、今日の疲労が残らないかを心配しながら就寝。