モデル化


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モデル化というのは、解空間を縮小させるために、 同様の性質をもったより低次元の空間へ写像する行為である。
例えば線形代数におけるKrylov部分空間法が挙げられる。
同様さは、そのモデル化の際に何を保存したいかによって 選び方が変わってくる。

理由を付けていく行為はまさにモデル化に相当しており、 これにより自らのキャパシティや訓練データの不足を補うことができる。

あらゆる事象に対して十分な訓練データが手に入るのであれば、 理由付けというモデル化をすることなく、目で見て人の顔を認識するのと 同レベルに判断をこなせるようになる。
もし電脳化、あるいはそこまででなくても、異なる人間間での経験の共有が 大規模で高速に行えるようになったら、訓練データが爆発的に増えることで、 こういった方向に進化できる可能性はあるだろう。

現代でも、常識、宗教、世論等といったかたちで、大勢に対して共通のモデルを 提示することによる経験の共有は図られており、ある程度の成功を収めている。
こういったモデルにはまりこめば、縮小された解空間の中で解を探索するだけで済むので、 より高速に判断が下せるようになる。
しかし、高次から低次への写像の際には必ず失われる情報があるため、 低次から高次を完全に再現することは不可能な場合が多い。
これにより、異なるモデル間に超えようのない差異が生まれる可能性が 一定の割合で存在し、対立を生む結果となる。

人類全体が同一のモデル化を採用し、唯一の狭い解空間の中で生きる世界というのは 完全にディストピアである。
そこにはもはや意識が不要であり、皆が「合理的」な判断をしながら幸せに暮らせる。
これがハーモニーで描かれた、スイッチが押された後の世界だろう。

訓練データには、必ずその評価値を設定するための正義が前提される。
縮小された解空間の中からその正義を暴くための驚異の定理は存在するだろうか。