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人体の神経系と同様の構造をもった回路に、 諸感覚器官と概ね同じ位置に配置したセンサを 組み合わせた機械があるとする。
その機械には動力と通信装置を装備しておき、 プロセッサは不要とする。
各センサに入力された情報は回路を経由して 通信装置に送ることができるものとし、 逆に通信装置から回路を通じてセンサの位置や方向を 変更できるものとする。

人間の脳に別の通信装置を接続し、この機械を 別の場所に置いた上で、2台の通信装置を介して 情報をやり取りすることを考える。
このとき、人間はどのような存在感覚をもつだろうか。

もし、元の人体の神経系に対する脳からの通信を 遮断すれば、慣れるための期間は要するものの、 機械が置かれた位置に存在するように感じると考えられる。
(そうでない場合は、つじつまを合わせるために、どちらか 一方の存在感覚が卓越し、もう一方はないものとされるか、 つじつまが合わなくなり、現実という存在感覚が薄弱に なるのかもしれない)

通信時間の都合上、センサの入力からセンサへの指示までに 人体の場合よりも時間がかかるのは確かだが、その遅延は 当初は引っかかるものの、次第に脳で自動的に処理される ようになり、気付けなくなるに違いない。

完全に慣れてしまえば、もはやプロセッサとメモリとしての脳が あれば、自分という存在感覚が維持できるようになる。
このことから、脳の中に意識があると言えるだろうか。
いや、そんなことはないだろう。
脳の役割はプロセッサとメモリに相当する機能だけでよい。
そこにセンサが接続され、その姿勢を制御できる状況において、 姿勢制御と入力情報の変化の対応付けを行うところから、 存在するという間隔は生まれるはずだ。
異なるタイミングの入力情報間で対応付けを行うために、 入力情報に対して特徴抽出をする処理自体が、まさに理由付けに よらない意味付けに相当するものと考えられる。
そこには何を同一とみなすかというフィルタが既にかかっている。
そして、その存在するという間隔を維持するために、入力情報に 理由付けを行うところから、意識が生まれるはずだ。

意識が存在するのではない。
存在し続けるために意識を実装するのだ。
It's not that consciousness exists.
It implements consciousness to continue existing.