風姿花伝


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世阿弥「風姿花伝」を読んだ。

古典の文章は久々に読んだので、文意をとるのに 一苦労したが、高校時代に古文の授業をちゃんと 受けておいてよかった。

岩波文庫で100ページあまりの短いものだが、 芸術論がてんこ盛りである。
個々の芸術論はもちろんためになるのだが、 花傳第七別紙口傳において、

因果の花を知る事、極めなるべし。一切、みな因果なり。
世阿弥「風姿花伝」p.106

とあるのや、

いづれを誠にせんや。ただ、時の用ゆるをもて、花と知るべし。
同p.109

とあるのがよい。
また、全体的に語感が整っていて、読んでいて心地がよいのも さすがである。

第一で、

この藝において、大方、七歳をもて初めとす。
同p.12

とあるのだが、カンデル神経科学第一章にあった、バイリンガルの 第2言語習得時期の違いによる、脳の活性化領域の違いを比較 した図を思い出した。
七歳あたりが、意味付け用の回路が確保できるかの境目に なっているのだろうか。
それ以降は、あらゆる処理が理由付けによってしかできないのであれば、 いくら磨きをかけても、精度と速度の両面で敵わなくなってしまうのだろう。