春の夜の夢


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人間は、理由によって自然を人工に置き換えることで、 エラーの導入と適応のサイクルを高速化してきた。
このサイクルを駆動させるのが充足理由律であり、 科学者はその最前線にいる。

科学者が人間の最前線を守るためにできるとすれば、 理由という色のペンで自然を塗り続けることだけだ。

理由なき判断機構に依存することによっても、 生物としての人間の繁栄は維持できるかもしれない。
しかし、意識による覇権は衰退を迎えるだろう。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
「平家物語」