棋士とAI


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王銘琬「棋士とAI」を読んだ。

AIは人間にとって脅威だという意見と、AIが できることはたかが知れてるという意見の 両方に共通するのは、それが何かしらの理屈 に支えられていることである。

「感覚」という判断基準を形成するには、 あまりにコストがかかり過ぎる判断について、 理由を付けることで判断基準を形成できるのが、 意識らしさだと思う。
「感覚」を形成するのに必要な膨大な試行錯誤を 省略したために生じる判断の投機性は、無意識の 「感覚」や、常識として埋め込まれた「感覚」と、 幾ばくかの飛躍を含んだ理由によって補われる。

この理由付けのプロセスが価値あることかという 判断も、理由付けによるしかないように思われ、 それはどちらでもよいと思う。

人間だけが理由付けすることを過度に持ち上げる 必要もないし、AIが理由付けするようになったと して、AIの提示する理由を受け容れるか否かは、 他の人間の理屈を受け容れるか否かと、それほど 違わないように思われる。

ただ、すべてが「感覚」で判断されるようになり、 理由を伴う飛躍の余地がなくなった世界は、単純に 面白くなさそうだな、というだけだ。
それは、面白いという判断が意識特有のものという だけのことなのかもしれないが。