読書時間


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第53回学生生活実態調査の概要報告

読書時間0分の割合がこれだけ増えていると、 何か有意な理由があるのではないかと想像 してしまうのが人間というものだ。

コミュニケーションは、言語や常識、慣習など、 「何を同じとみなすか」の判断基準に、暗黙の うちに支えられている。
情報伝達網が変化すると、バランスを取るかの ように、共有される判断基準も変化する。

送信チャンネルが限られている割に膨大な受信 チャンネルが存在する情報伝達網においては、 少数の判断基準によって編集された情報の大量 複製としてのマスコミュニケーションが、 判断基準の共有の権化であった。
書籍、雑誌、新聞、テレビ、映画、ラジオは、 いずれもが同じ情報を知っている多数の人間を 生み出す装置だった。

受信チャンネルと同じだけの送信チャンネルが 存在可能なように情報伝達網が変化した結果、 同じ判断基準を共有するものだけで集まるという、 マスコミュニケーション以外の判断基準の共有 方法が誕生した。
この共有方法は、送信と受信のチャンネル数の 平衡が取れている情報伝達網では容易に行なえ、 マスコミュニケーションより遥かに昔から存在 しているが、物理的な実体に起因する制限が 減ったのがこの数十年の成果だろう。

マスコミュニケーションの媒体は、いずれもが それ自体娯楽のための媒体として存在し続ける と思うが、それは数ある送信チャンネルの一つ としてである。
送受信のバランスが再び崩れない限り、かつて 謳歌したような青春は戻らないように思う。