文明


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直接コミュニケーションを取って判断基準を 共有することを「見知る」と表現すると、 文明とは、見知らぬ人間同士が間接的に 判断基準を共有することで密集した状態 だと言える。

その判断基準の共有は、国家などの間接的な コミュニケーション機構によって媒介されて おり、それによって文明人は、至近距離の 見知らぬ相手から危害を加えられる可能性に 目をつぶることができる。

見知らぬままの赤の他人とどこまで物理的に 接近できるかは、文明化の一つの尺度になり、 満員電車や渋谷の交差点などは最高に文明的 だと思うが、目をつぶった危害の可能性は、 決してゼロにはならない。

危害の可能性の端的な発露である通り魔の 蔓延は文明の病であるが、その対策を間接的な コミュニケーション機構だけに頼る解決方法の 先にはディストピアしかないように思われる。
しかし、至近距離の相手と見知ることによって 危害の可能性を減らすという選択肢が閉ざされ つつある現状では、それ以外に選択肢がある のかは大いに疑問である。