空間〈機能から様相へ〉


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原広司「空間〈機能から様相へ〉」を読んだ。

近代の空間概念が掲げた「機能」とは、特定の様相の 固定のことであったように思う。
それを突き詰めることで得られるのは、予断された 真・善・美に縛られた密着空間である。
一方で、その否定が、任意の様相を可能にする方向で 突き詰められると、結局は様相がない状態への収束を 招き、均質空間という離散空間が生み出された。
密着空間=終対象と離散空間=始対象の両極端だけが、 近代の一真教的な空間概念が提示し得た空間であった。

「機能から様相へ」という題は、特定の様相への固定を 免れることで、両極端に回収されないような空間概念を 宣言したものとして捉えることができる。

建築に限らず、何かを作る際には、具体的なものとして 作らざるを得ないが、具体的なものを立ち上げるには、 特定の境界を設ける他なく、それは判断基準を設定する ことにつながり、少なからず「Aである」という宣言を 含んでしまう。
それが「Aである」に留まって近代的な機能にならない ために、「A・非A・非A非非A」、ΓΓA、〈非ず非ず〉 によって、境界=判断基準を固定化することなく、 様相の重なり合いに展開していく道に進む。
それは三次元空間+時間という絶対的時空概念から、 四次元時空という相対的時空概念への変化とも符合 している。

一つの判断基準があるのでもなく、ないのでもなく。
重なり合うことで、ダブルスタンダードではなく デュアルスタンダードとして現れる。
重なり合った様相によって様々に彩られる、 〈秋の夕暮れ〉の建築を、作っていけるだろうか。