深層学習によるパラダイムシフト


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アンリ・ポアンカレは、

事実の集積が科学でないことは、石の集積が家でないのと同様である。
ポアンカレ「科学と仮説」p.171

と言ったが、ランダムに集積された石の中に 家として機能するものが存在し得るように、 事実の単なる集積がたまたま判断基準として 利用できることはあり得る。

集積したビッグデータを用いて理由抜きに 行われる深層学習は、まさにこの種の判断 基準を構築していると言える。

その判断基準は科学とは呼べないであろうが、 科学とは別の判断基準として受け入れられて いく可能性は大いにあり、深層学習による パラダイムシフトが今まさに起きようとして いるのかもしれない。
それはあたかも、長きに渡り優勢だった精神 から身体への揺り戻しのようである。

ホワイトヘッドが危惧したように、科学が 哲学的でなくなり、仮説の雑多な寄せ集めに 堕すのであれば、パラダイムシフトも滑らかに なされるであろう。

深層学習の成果を科学の文脈で扱うのか、 あるいは新しいパラダイムにおいて扱うのか。
それを決めるのは科学者や哲学者だけでなく、 人間がどのように受け入れるかにかかっている。

その行く末は意識の在り方も変えていくはずだ。