はざまの哲学


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野家啓一「はざまの哲学」を読んだ。

あまりに複雑な過程を捉えようと、ある基準の 下に過程の情報量を圧縮したものが実在である という意味で、ホワイトヘッドの言うように、 実在とは過程なのだと思う。

一定の傾向をもつ情報の作用によって基準が 偏ってくると、いつしかそれは文化、慣習、 常識、癖、などの信念・技能体系となり、 変化に対する慣性を有するようになる。

特定の信念・技能体系への固定化に陥らない ためには、フッサールの言う還元が要るの だろうし、いかなる偏りも有しない圧縮と いう無意味な状況への発散を免れるには、 メルロ=ポンティの言うように、完全な 還元は不可能なのだろう。
固定化と発散、壊死と瓦解の間において、 過程の圧縮の仕方=パースペクティヴの 変化が続く様を、生成と呼ぶのである。

一つのパースペクティヴから、 別のパースペクティヴへ。
その「理解」と呼ばれる還元のさなかに 現れる「はざま」という危機の領域に 身を挺することなしに、情報内存在は 生きていられない。