考える皮膚
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港千尋「考える皮膚」を読んだ。
内と外を隔てる境界は、内や外の在り方を
決める重要な役割を担っている。
人間の身体という内にとっては、皮膚が
最大の境界であり、境界侵犯へのアラート
である触覚は、内と外の関係にとって最も
重要な感覚だと言える。
むしろ、境界を定めることによって内と外
の区別が生じることを考えれば、内ありきで
境界を重視することすら既に転倒しており、
本質は表面にあるということなのだろう。
網膜という小さな境界によって厳然と区切
られた精神という内こそが自己であるという
近代的な信念にすがったままでは、内と外、
あるいは内同士の関係は次第に矮小化し、
各々がアリジゴクへと収束していくだろう。
皮膚や情報通信網、あるいは別の新しい
「皮膚」における触覚を通じて、内と外の
関係の更新が続いてこそ、人間は生きて
いることになるはずだ。