方法・手法・道具


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作業には、職人の時代、科学者の時代、技術者の時代が存在する というような話が「人間機械論」に書かれていた。

職人の時代には、試行錯誤によって方法が洗練されていくが、 理由付けがなされないため、修行等のかたちで作業自体を 通して方法が伝達される。

科学者の時代には、職人の方法が理由付けされることで、手法という 言葉として抽象される。
手法それ自体は作業を進めるものではないが、抽象された構造を もっていれば細部は捨象できることや、伝達が容易になることから、 具象としての方法は種類や範囲において広がりをみせるようになる。

技術者の時代には、手法を基に道具が作られることで、場所や人、 時代等に対する方法の依存性が低減される。
道具とは、外部として析出したシンボルである。

職人の時代において誰にでもできるものではなかった作業は、 次第に誰にでもできる作業に変わっていく。
そして、ときに既存の手法や道具を破棄し、方法に立ち返ることで、 新しい手法や道具を作り出し、固定化を免れる。

方法(way)、手法(method)、道具(tool)。
いずれの段階であろうと、そのどこかにとどまること自体が、 人間の人間らしさを損なわせるのだろう。