あなたの人生の物語
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テッド・チャン「あなたの人生の物語」を読んだ。
このところ考えている、理由と時間の関係が主題に
なっており、とても共感できるストーリィだった。
因果律的解釈に従う人類と違い、“それら”は目的論的
解釈に従う。
すべては同時に経験され、逐次的な経験が生み出す
理由欲の代わりに、目的を欲するようになる。
経験から順序関係が剥奪されることで一意的なエントロピーが
定義不能になり、一方向に流れる時間も存在しなくなる。
逐次的意識にとっての「なぜ」という問いは、同時的意識に
とっては「どのように」という問いに相当する。
諸事象間に時間の前後関係がなく、完全に調和しているときに
問うべきことは、それはどのような点で調和しているのか、
ということだ。
伊藤計劃「ハーモニー」でスイッチが押された後の世界に
おける意識は、まさにこの同時的意識のようなものだろう。
「あなたの人生の物語」という小説を提示すること自体が、
〈ヘプタポッドB〉を習得した「わたし」が、逐次的意識と
同時的意識がないまぜになった意識で認識し、記述する
様を示しているというのが素晴らしい。
今度日本でも公開されるらしいが、どのように映画化されて
いるのだろうか。