日本人とリズム感


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樋口桂子「日本人とリズム感」を読んだ。

稲作の作業で息を合わせるために、個を同質化するように 培われてきた日本のリズムは、音楽や舞踏だけでなく、 言語や所作、絵画など、文化の至るところに根付いている。
上へ外へと向かい、円を描くような粘りのある連続性をもつ 西洋近代のリズムに対し、日本のリズムは下へ内へと向かい、 そこには表と裏の断絶がある。

分離した表と裏は、「コソアド」の「ソ」の場によって繋がれる。
「コ」と「ア」がそれぞれの主観の中の場であるのに対して、 「ソ」は「コ」と「ア」の間にあるのではなく、主観同士を繋ぐ 別の場として現れ、日本特有のリズム感をつくる。

「ソ」の働きは、切り取るとともにその間をつなぐ、 独特の時の意識をつくっていった。
樋口桂子「日本人とリズム感」p.278

歌舞伎の花道や日本絵画の中景にみられる「ソ」のイメージは、 表と裏をつなぎながら、そのどちらでもない「移し」の場所であり、 「もの」と「こと」を使い分ける感覚や「なつかし」という感情を 醸成してきた。

良い悪いというのは、ある判断基準に照らして合致するか否か でしかないから、リズム感が悪いというのも、西洋近代の 連続的なリズム観という判断基準を前提してのことである。

「ソ」の文化のリズムもまた、これはこれで面白いものである。