ヨーロッパ的普遍主義


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イマニュエル・ウォーラーステイン「ヨーロッパ的普遍主義」 を読んだ。

「野蛮」に対する干渉の権利、本質主義的普遍主義、 科学的普遍主義と変遷してきた近代世界システムの ヨーロッパ的普遍主義は、特定の構造を強化する ことで、一真教的に権力を固定化してきた。

その否定が、あらゆる思想の価値を平等に評価する 超個別主義的撤退になってしまっては、大きな物語を 共有することでコミュニケーションの排除を可能に した近代的な〈都市〉と何ら変わるところがなく、 普遍的普遍主義という別の普遍主義に移行することで、 ヨーロッパ的普遍主義からの移行は可能になる。

ヨーロッパ的普遍主義においては、大いなる判断基準に 合わせることで、収束へと向かうことが集団を維持する ことだったのに対し、普遍的普遍主義においては、その 都度判断基準をすり合わせることでコンセンサスに至る 努力を続けることが集団を維持することになる。

新しい〔緊張の〕止揚を見いだしては、すぐにまた それが問いへと投げ返される、一種の絶えざる 弁証法的交換を行いうるようになるのである。
イマニュエル・ウォーラーステイン「ヨーロッパ的普遍主義」p.104

世界規模で共有されるのは、「正しさ」自体ではなく、 「正しささ」のようなものへと変化する。
集団の規模はもはや単調増加である必要がなくなり、 固定化を免れるとともに、「正しささ」を共有する ことで発散も免れる。
普遍主義Universalism=unus (one) + versus (turn) のoneは、大文字のOneから小文字のoneになり、 集団は作られては解体されるモードになる。

そこには、結局のところ、人間が集団を作らずには いられないという前提が含まれているが、それは 人間に限らず、コミュニケーションをとる存在 すべてに該当することであるように思う。