まなざしの装置


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平芳裕子「まなざしの装置」を読んだ。

様々なメディアを介して自動的に志向される複製の完全性が、 正統なものAuthenticity=auto+accomplishを彫琢する過程は、 技術の完成に取り憑かれた近代特有の現象だ。

ファッションもまた同じ過程を辿り、ファッション・プレート、 パターン、ショーウィンドウ、ファッション展などを介して、 「飾る女性」、「縫う女性」、「模る女性」、「巡る女性」
というイデアル=理想の下、現実が理想の複製となるように イメージが反復されてきた。
理想に追随するように現実が更新されていくこの過程が、 モードと呼ばれるものだろう。

ファッションはなぜ女性のものと見なされるのかという問いを 起点に、近代アメリカを中心として組み立てられる本書の ストーリィ自体もまた、近代科学の作法に則った論文構成や 論理展開の上に成り立っており、何もかもを単一のイデアルの 下に飲み込んでしまえる近代というシステムの無慈悲なまでの 強力さをひしひしと感じる。