廃墟の美術史
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松濤美術館の「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」を観た。
万物は流転するが、流転の速度には差異がある。
その中で、本来とは異なる速度で流転している
領域のことを、自然に対する人工と呼べば、
人工は自然との速度差を維持する働きによって
保たれているとみなせる。
秩序の更新過程を制御する働きが止めば、
当該領域は再び自然の流れに合流するが、
速度差が解消するには時間を要する上に、
合流した結果が元の流れと同じものに
戻るとは限らない。
そのような人工の発散過程が廃墟であり、
一種の過渡現象として近似できるだろう。
近代の理想が、絶対時間の実現、すなわち
時定数を無限大にすることだったとすれば、
近代文明は廃墟になることを想像しない
ことで「進歩」してきた。
廃墟への眼差しは、そういう意味で退廃的な
ものとして認識されるかもしれないが、
その視点を失った文明は既に壊死している。