2019年


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今年印象的だった読書は、「新しい実在論」「新記号論」「千夜千冊エディション」あたりか。
「新しい実在論」では、「存在とは抵抗である」ということに考えが至った。dataからinformationへの抽象の仕方は様々であり、その多様性がつまり自由ということなのだが、それでもやはり全く勝手ということではない。その勝手にできないという固さが抵抗としての存在につながる。ソフトウェアとハードウェアの問題である。
「新記号論」では、コヒーレントな振る舞いを一つの塊とみなす過程が、つまりはdataからinformationへの抽象化なのだということを考えた。コヒーレントな振る舞いがある種の抵抗になり、一群は一つの個体として存在するとみなされるのである。最近研究テーマになっている、複数の振動する時系列データの相関を捉える手法とも関係があるはずだ。
「千夜千冊エディション」自体は2018年5月から刊行され始めているし、何なら千夜千冊の連載は2000年2月に遡る。散々読書の参考にしながらもつまみ食い状態であった千夜千冊に、ちゃんと向き合おうと一念発起したのが今年の7月であった。今は12/24に出た「編集力」を読んでいる。

ドクタの学生だった頃は、考えたことをゆっくりと文章にする時間が取れたのだが、最近はなかなかそれも叶わず、記事の本数はめっきりと減ってしまっている。購入した本の数と読了した本の数は2017年や2018年と大差ないのだが、やはり言語化を怠ると考え事ははかどらない気がする。
その一方で、設計の実務が増えたり、展覧会や演劇を観に行ったり、演奏会をしたりと、身体的な実践のウェイトも少しずつ大きくなってきている。一対一・一対多・多対多、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚、言語・非言語など、物理情報を直接やり取りするコミュニケーションを通して、ソフトウェアとハードウェア、通信可能性と応答可能性、dataとinformation、除算モデルといった考え方を、実際の行いの中で確かめていきたい。