カンデル神経科学第2章


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第1章「脳と行動」

第2章「神経細胞、神経回路と行動」では、神経細胞の構造と シグナル伝達の仕組みが概説される。

神経系を理解するための基本的特徴として、 下記の5つが挙げられている。

1. 個々の神経細胞の構造的な構成要素 2. 神経細胞内および神経細胞間でシグナルが生成される機構 3. 神経細胞間の接続パターン、および神経細胞とその標的である   筋肉や分泌腺との接続パターン 4. 異なる相互接続パターンと異なる行動との関係 5. 神経細胞やその接続が経験によっていかに変化するのか E.カンデル「カンデル神経科学」p.20

神経系には神経細胞とグリア細胞の2種類の主要な細胞がある。

シグナル伝達の役目を果たす神経細胞は、脳内におよそ10^11個ある。
大きく分けると、単極ニューロン、双極ニューロン、多極ニューロンの3種類 に分類される。
グリア細胞は神経細胞の2〜10倍も存在するとされ、神経細胞を取り囲む ことで絶縁体のような役目を果たしている。

神経系構築の2原則として、

  • 動的極性化の原則
  • 接続の特異性の原則

が挙げられている。
前者は、神経細胞内でシグナルは一方向に伝わるというもので、 後者は、シナプスの形成が特定の部位に特異的になされるというものだ。

図2-7では、発散(divergence)と収束(convergence)という、2種類の 接続パターンが示される。
前者は、1つの神経細胞が複数の神経細胞にシグナルを伝えるもので、 後者は、複数の神経細胞からのシグナルを1つの神経細胞が受け取るものだ。
図2-9には軸索初節において、複数の入力シグナルがトリガーシグナルに 収束する様が描かれている。

受容器電位という入力シグナルは受動的、局所的であり、刺激の大きさと 持続時間に応じて振幅と持続時間が連続的に変化する。
これがある閾値を超えることで、能動的で離散的な活動電位が生じる。
このあたりは「計算機と脳」の中でも、周波数変調の通信系の一種として 描かれていた。
トリガー帯におけるconvergenceは、ある種のXORゲートなのかもしれない。
でもその出力は活動電位の有無という2値だが、入力は多チャンネルであり、 何かと何かが同一というよりも、その入力がどのくらい溜まったかであるところが 特徴的である。
活動電位は100m/sで伝わる、全か無かの性質をもつデジタル的なシグナル であり、神経細胞毎の違いがわずかしかない。神経系におけるプロトコルの 役目を果たしているのだろう。
活動電位は最後にシナプス終末に辿り着くことで、神経伝達物質の放出を 引き起こす。

章の最後では、ニューラルネットワークとの関係や、神経接続と経験の関係から 可塑性仮説にも触れられる。
医学よりも工学寄りなので、こういう話とのつながりも見えてくるあたり、 とても参考になる。