デジタルデザイン


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デジタルはアナログに比べると離散的であり、 それはある規則に従って元の情報を別の記号で 置換することで達成される。
デジタイズとは、情報を記号によって置換する 過程である。
An At a NOA 2017-12-23 “アナログとデジタル

要素数の多い集合Aと少ない集合Bの要素同士を 対応付けると、Aの異なる要素aiとai'がBの同じ 要素biに対応するケースが必ず発生する。
鳩の巣原理である。

Aに対してBの要素数がある程度以上少なければ、 Bはデジタイズされた記号として機能できる。
AやBを圏だと思えば、この対応付けは関手Fであり、 ある構造を設定することで自由度を減らすような、 自由構成関手だと言える。
Aのいくつかの要素をまとめたものがBの要素である とみなせば、BにおいてはAよりも要素同士が孤立した 状態が生まれやすくなり、Aはよりactual、Bはより virtualになり得る。

拘束条件が複雑に絡み合ってできた独立変数の塊は、 何らかの個として認識されるが、個を繋ぐ拘束条件が 少なければ、その個にとってはvirtualな世界が広がる。
An At a NOA 2018-01-09 “actualとvirtual

圏A、Bにおける対象を案、射をスタディとすれば、 上記の自由構成関手はデザインのデジタル化である。
自由度の落ちた圏Bにおける射g: bi→bjの処理は、 元の圏Aにおける射f: ai→ajに比べて、  1. 遥かに高速である  2. 時間、空間、お金、発想などの制限が少ない のような利点があり、デジタルデザインが新しい 対象を生み出す可能性を秘めているのは間違いなく、 実際に生み出し始めている。

スタディ後、圏Bの対象を圏Aの対象に戻す関手Uは、 デジタイズの関手Fが設定した構造を解除し、 virtualからactualへと戻る忘却関手である。
このとき、Aでは暗黙に前提されていた構造が Bにおいて解除されてしまっていると、コストや 施工性が犠牲になってしまう。
AとBを行き来する関手FとUが、自由構成関手と 忘却関手のような随伴になっていないということだ。
これに対処するには、関手FとAの構造のいずれかを 修正する必要があるだろう。
Fの修正は、コストや施工性を見込んだデジタイズ にすることであり、Aの構造の修正は、新しい対象に 合わせた生産・施工体制を構築することである。

デジタルデザインをやるにあたって、デジタイズ という関手Fがどのような構造を設定するのかを 意識するのはもちろん大事だが、同じくらい大事 なのは、出来上がった対象に対してどのような構造を 見出すかであり、それをおこたるようであれば、 その過程はもはやデザインではないように思う。
それはつまり、理解や説明を心がけるということだ。

ここで言う構造は、力学的な構造に限らない。
受け取る情報をある判断基準をもって処理するとき、 その判断基準が何を同じとみなすかによって、必ず 何らかの構造が現れる。
自らのまわりにあるいろいろな判断基準を気にかけ、 必要に応じてすり合わせられるようにしておくのが、 生きているということである。

この話はデザインだけでなく、教育にもつながるのだが、 何が言いたいのかというと、建築雑誌の2018年1月号を 読んでいろいろと考えたということである。